インタビュー

参加者インタビュー(2013年)

大学生
ユース・エンディング・ハンガー茨城、TABLE FOR TWO筑波大学 他

筑波大学で講演会などを開催したユース・エンディング・ハンガー茨城(以下YEH)の荒井ひかるさんとTABLE FOR TWO筑波大学(以下TFT) の中村俊太さん、佐々木めぐみさん、母校の朝会でプレゼンテーションを行った鐘ヶ江美沙さん(明治学院大学)にお話を伺いました。

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昨年の「世界食料デー」月間にどんなことをしたのか、それぞれ教えてください。

鐘ヶ江:母校に遊びに行ったらいろいろなチラシが置いてあるスペースがあったので、「チラシを置いてもらえませんか」と先生に話してみました。そうしたら「全校生徒に配ったほうがいいんじゃない」というアドバイスをもらって。教頭先生に許可をもらいに行くと、「配るだけだと捨てられちゃうから、全校生徒に向けて話す方がよいのでは」ということになり、10月の朝会で約700人の中学生に世界の飢餓や食料廃棄の現状についてのプレゼンテーションを行いました。緊張しましたが、生徒のみなさんも、先生たちも真剣に話を聞いてくれました。

荒井:YEHとTFTは2011年から、学生食堂でチャリティメニューを提供したり、写真やレシピなどを展示しています。それが好評だったので2012年は何か1つ大きなイベントをやってみようと、共催で講演会を開催しました。お互いに初めての経験でしたが、いろいろな人に協力してもらえたことで、思っていた以上に大きなイベントになって。「世界食料デー」月間のホームページでも広報もできたので、当日は、東京から足を運んでくれた人もいました。

佐々木:2つの団体でコラボできたこともよかったです。飢餓という同じテーマで活動していますが、TFTの方がどちらかというと参加のハードルが低くて、気軽にメンバーになってくれる人が多いです。一方で、YEHは飢餓や食料問題について真剣に考えている人が多い。簡単な説明文をまとめるにもいっぱいフィードバックをもらえて、刺激になりました。


3_プレゼン イントロダクション

「何かしたい」と思っても、1人で行動を起こすのはなかなか難しいと思います。一緒に活動してくれる仲間を増やすにはどうしたらいいでしょうか?

荒井:筑波大生の特徴なのかもしれませんが、ガチな話をするのが好きな人が多い気がします。みんなでご飯を食べながらしゃべっているようなときにも、最後には世界情勢の話になったりする。「こんなこと話したら真面目すぎると思われて恥ずかしい」と思うかもしれないけど、話してみると共感してくれる人が出てきて、新しいアイデアが生まれるかもしれない。人に伝えてみることって大事だと思います。

鐘ヶ江:私もまったく同じことを思っていました。口に出してみないとわからない。真剣に話せば、10人に1人ぐらいは耳を傾けてくれるはずです。力を貸してくれる人も絶対にいるので、あまり構えずに、親しい友だちや先生など身近な人から話してみると新しい発見があるかも。意外と家族とか。

佐々木:信頼できる先輩に話してみるのもいいかも。実際に、いいアドバイスをもらえたこともありました。

中村:人に話してみると、たとえ共感は得られなかったとしても、自分以外の人がどんなことを考えているかがわかる。そうすると、どうやったら大学生が周りの人を動かしていけるのか考えるきっかけになるので、イベントなどの企画を考えるときのヒントにもなりますよね。

自分の想いを声に出したことで共感が生まれ、周りの人たちの協力を得て、それぞれの企画を成功させたみなさん。「中高生向けの写真展を企画したい」「SNSを活用して『食』について考えるきっかけをつくりたい」「地域の農家とのつながりを感じられるような企画を学食でできたら」など、今年の「世界食料デー」月間に向けてのアイデアが次々と湧き上がっていました。

 

企業
ちがさき濱田屋

岩澤裕基さん

神奈川県茅ヶ崎市の仕出し弁当店「ちがさき濱田屋」。茅ヶ崎駅前の弁当販売店に併設するレストラン「濱田屋キッチン」では、毎年「世界食料デー」月間のチラシを配布しています。

「食」を中心に置いた豊かな生活

ちがさき濱田屋で企画部門を担当する岩澤さん。大学卒業後、原付バイクで日本一周をしたときに出会った有機農家の方から、アジアやアフリカからの農村指導者研修を行うNGO「アジア学院」のことを聞き、栃木県那須塩原の農園で2年間住み込みボランティアとして働いた経験があります。そこで知り合った友人を訪ねて、世界各地の農村を旅したことも。「アジアの国々を中心にミャンマーやインドなどコミュニティーを訪れましたが、食を中心に人の営みが回っていて、とてもシンプルで人間らしいと思いました。経済的には苦しい農村ばかりですが、家族で囲む食卓にはいつも笑顔がありました。それと対照的に日本では、食事の栄養価は高くも、レンジでチンして一人で食べるだけの食生活。どちらが本当の意味で豊かなのか、考えさせられました。どこの国でも都市部に行けば行くほど、人と食べものとのつながりが薄れている気がします。食生活をもう一度意識する事で、手作り料理を食べる喜びや、地産地消の食材が身近になればと思っています」。

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日常のなかで世界とつながるきっかけに

ちがさき濱田屋では、地域の人たちとのつながりを大切にした取り組みを行っています。レストランの料理には湘南地区で採れた三浦野菜を使用したり、地元の有志と「街と人がつながる、手作りの映画祭」をテーマにした茅ヶ崎映画祭を企画したりしています。また2011年には、茅ヶ崎市が行う地域活性化プログラムの一環として、文教大学の学生と地元の農家の方と一緒に、茅ヶ崎の野菜を使用した弁当「まるごと茅ヶ崎ラタモコ丼」を商品化して朝市や店頭で販売し、売り上げを震災支援としました。

「食の問題は正論を声高に言うのでは、何も変わらないと思っています。日常生活に溶け込んだ自然な形で大切なメッセージを伝えることや、今までにもあったものを何か少しだけ変えることで、食生活の変化を毎日の生活のなかに取り入れていくことが大切ではないでしょうか。まさに『世界食料デー』月間は、日常生活のなかで世界とつながる、いいきっかけだと思っています」。

地域にしっかりと根差しながら、世界ともつながる取り組みを続ける岩澤さん。イベントやNGOの活動を紹介するチラシスペースに、今年も「世界食料デー」月間のチラシも早速置いてくださいました。

栄養士
神奈川県小田原市 小学校栄養職員

吉永加那さん

2012年度のプレイベントとして開催された栄養士向けの講演会で、青年海外協力隊として活躍した後に小学校の栄養職員として働く自身の経験を話しました。

生きる基盤としての食教育

保育園の栄養士として働いた後、青年海外協力隊としてコロンビアに赴任した吉永さん。現地で活躍するNGOで、妊産婦や子どもたちに低料金で昼食を提供したり、栄養について学ぶ講演会を開催したりしました。「自分と同じ栄養士をはじめ、コロンビア人スタッフから人として学ぶことがとても多くありました」。

日本に戻って保育園で働いた後、小学校へ。帰国後は、国内の問題にも目が行くようになったそうです。「日本の子どもたちは食べるものに困っていないように見えるけど、食べているもの、一緒に食べている人、食べているときの気持ちに違いがあることに気づきました。先進国でも栄養の過不足の問題はある。じゃあ、私は何をすればいいのか考えるようになりました。コロンビアでは、お金がなくて十分に食べられない人がたくさんいました。日本もコロンビアも人々の暮らしは社会的な動きと深く関わっていて、変えることが難しいこともたくさんある。でも、それぞれの社会のなかで生きる基盤を獲得するためにできることがあって、それは教育だと思いますし、食教育もそのひとつだと思うんですよね」。

 
 

世界の「食」とのつながりも伝えたい

昨年度の「世界食料デー」月間のプレイベントである栄養士向けの講演会で、青年海外協力隊や職場での経験を話した吉永さん。講演会は、定員をはるかに上回る参加者を集め、大盛況でした。この講演会に参加したことで、どのような変化があったのでしょうか。「普段は自分の経験を話す機会はほとんどないので、どういう想いで栄養士になったのかを見つめ直すいいきっかけになりました。子どもたちに『人の心と体を豊かにしてくれる食を大切にできる大人になって欲しい』という想いがあるから続けているということを、改めて確認できました」。

4月から新しい小学校に着任し、今後、食教育を1からスタートすることになった吉永さん。「『食』と自分の心や身体とのつながり、いずれは世界の『食』とのつながりも伝えていきたいです。でも、自分でゼロから勉強して教材を作るとなると大変。「世界食料デー」月間のチラシのようなわかりやすい情報やツールは、とてもいいですね」とも話してくれました。

フードコーディネーター
藤本有希子さん

新店舗の立ち上げなど、仕事を通して知り合った飲食店に、毎年チラシの設置をお願いして「世界食料デー」を広めています。

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“食”でつながる空間

家族がばらばらのタイミングで食事をすることの多い環境で育った藤本さん。子どもの頃から自分で食事を作ることもよくあったそうです。「家族で食卓を囲むことに憧れがありました。でも、高校生になり、友だちと食事をすることが増えると、みんなで食卓を囲むことが『憧れ』から『楽しさ』に変わりました」。卒業後は飲食店での勤務を経て、フードコーディネーターに。「フードコーディネーターは“食”を通して人と人をつなぐ調整役。家族でも友だちでも、ときには旅先で出会ったまったく知らない人同士でもいい。いろんな人たちが“食”でつながる空間をつくっていけたら」。また、このような夢も話してくれました。「大きなことを言うかもしれませんが、『食で世界平和』が私の人生のテーマです。どこに住んでいても、ちゃんとご飯を食べられるような世界になって欲しいです」。

2_藤本さんが担当したガーデンウエディングのケータリング3_photo

 

七夕に笹を飾るように

なぜ、食への興味が世界へと広がったのでしょうか。「高校生のときに阪神大震災が起こって被災したときに、世界中の国からたくさんの支援をいただきました。『困っていた人がいたら助ける』という母親の教えもありますが、自分が助けられた経験があるので、『もし自分がその国で生まれていたら』と思うと他人事ではありません」。東日本大震災の後からは、被災地のカフェの復興支援や岩手の食材を使ったチャリティイベントを毎年開催。まずは、自分のやりたいことを「口にしてみる」ことで共感を生み、「続ける」ことでまわりの人たちを巻き込んでいます。

今年は飲食店へのチラシの設置だけではなく、「世界食料デーにはこれ」という何かができないか、とも話してくれました。「“食”の問題に興味がある人は多いと思うので、行動したことがない人たちをどう動かすか。子どもの頃にみんながやっていたことは、いずれ当たり前になっていくはずです。七夕に笹を飾るように、世界食料デーに飲食店が自然と関われる仕組みがあれば……」。藤本さんが考え始めた参加者を広めるためのアイデア。新しい行動につながりそうな予感がします。