インタビュー

参加者インタビュー(2015年)

教育委員会
横浜市教育委員会

森博昭さん

横浜市教育委員会では、2012年から市内にある約500の小・中学校へ向けて、「世界食料デー」月間のチラシやポスターの配布に協力してくださっています。横浜市教育委員会事務局で国際教育の主任指導主事を務める森博昭さんにお話を伺いました。

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お互いを理解するツールとしての英語

横浜市には、国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所を始めとする国際機関の事務所がたくさんあります。また、海外に国籍をもつ生徒が多く、96ヵ国とのつながりがあるそうです。多様な文化をもち、さまざまな言語を話す人々と一緒に暮らしていくために、横浜市では国際理解教育に力を入れているそうです。教育委員会で9年にわたって国際理解教育の推進役を務めてきた森さんですが、以前は中学校で英語の教員をされていました。「海外の映画が好きで、英語を勉強するようになりました。政治とか、経済だけではなく、食、ファッション、ゲームなどを通して世界中のいろいろな人とつながっていけるといいですよね。もちろん、アイデンティティをもつことは重要ですが、お互いの文化を知って、認め合うことも大切。なるべく多くの人が日本という枠を超えて物事を考えられるようになるといい。今までは限られた人が英語を話して、世界で活躍する時代でしたが、これからは誰もが世界に出て行く時代。英語はお互いを理解するためのツールになると思って、子どもたちに教えてきました」。

 

まずは食の大切さを知ってもらうことから

横浜市内の小学校では1987年から、外国人の講師(IUI=International Understanding Instructor)が各クラスを担当し、母国のことを英語で紹介する国際理解教室を実施しています。アジア出身の先生が一番多いそうですが、他にもヨーロッパやアフリカなど、さまざまな国の先生がいるそうです。担当する学校も毎年変わるため、子どもたちは小学校の6年間で6ヵ国の先生と触れ合うことができます。「国際理解教室では先生の母国と日本との比較をするのですが、そのなかで必ずといっていいほど取り上げられるのが食べ物の話。子どもたちも率直なので、国によっては『えっ、そんなものを食べるの?!』というような発言が飛び出すこともあります。でも、テレビなどを通して間接的に知るのではなく、目の前にいる先生から直接話してもらうので、『どうやって食べるの?』『どうやって作るの?』などと質問をしながら、歩み寄ろうとする気持ちが自然と生まれるようです」。

横浜市では他にも「よこはま子ども国際平和スピーチコンテスト」を開催しています。「国際平和のために今自分ができること」が毎年のテーマで、さまざまな視点から自分の想いを発信してもらうことが目的です。例えば、日本でたくさん食べ物が捨てられていることから視野を広げて、十分に食べられていない国のことを考えるなど、食をテーマにスピーチをする子もいるそうです。「ほとんどの子どもたちにとって、食べられない人たちのことをいきなり考えるのは難しい。まずは食べることの大切さを知ることが第一だと思います。それに気づいたうえで、初めて食べられない人たちのことも想像できるようになるのではないでしょうか」。

食べることが好きで、「国際交流イベントに行くといろいろな国の食べ物を食べるのが楽しみ」とも話してくれた森さん。食という身近なテーマを通して、これからも子どもたちと世界をつなぐ架け橋としての活躍が続きます。

生活協同組合
生活クラブ神奈川

五十嵐仁美さん

生活協同組合の一団体として活動する生活クラブ。そのなかの生活クラブ神奈川は2012年から毎年、賛同団体として「世界食料デー」月間に参加しています。理事長を務める五十嵐仁美さんにお話を伺いました。

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食べ物の裏側にある世界

1989年に生活クラブ神奈川へ加入した五十嵐さん。1993年に「消費委員」という役職に就いたことが、その後の活動に大きく影響したそうです。「覚えている方も多いと思いますが、日本はこの年、まれにみる冷夏でした。お米が不作で、海外から緊急輸入するほどでした。私たちは提携先の山形の生産者からどうにかお米を仕入れたものの、どのように配分するかを組合員で決めないといけなくて。もちろん、たくさん注文したい組合員もいるなか、平等になるよう調整するのがとても大変でした」。

もうひとつ忘れられないことがあるそうです。「生活クラブは山形県の生産者とのつながりが強く、毎年庄内で交流会を行っています。1993年はその20周年記念でしたが、翌年の1994年に交流会に参加したときのことが記憶に残っています。生産者の話を聞くことで、毎日食べている物の裏側にはいろいろな社会問題が潜んでいることを知りました。本を読んだり、学校の授業で学んだりできない何かを、一人の生活者として得られた気がします。今はインターネットで検索をかければ、いくらでも情報が手に入る時代。でも、生活クラブは組合員にとって気づきの場であり、自己実現の場です。何か気になることがあれば持ち寄って、自分たちで調査をし、実際に事業として行ってデータとして蓄積し、それを発信することで社会化していく。個人ではなかなかできないことも、みんなで活動をつくっていくことで、実現できると思っています」。

 

食について伝え、考えてもらうために

生活クラブ神奈川では、地域ごとに「講座」を開催しているそうです。組合員自ら講師になって、食や暮らしについて知り、考える場を提供しています。そのような場面で何かを伝えるときには、次のように心がけているそうです。「相手に押し付けるのではなく、興味関心を引き出して、それに合せて話していくことが大切だと思っています。そうすれば、私たちが伝えたかったことを、何かのきかっけにふと思い出してもらえるのではないでしょうか」。

また、生活クラブ神奈川で活動するなかで、五十嵐さんの伝えたいことが明確になりました。「提携生産者との交流会に参加するたびに、日本の自給率の低さに驚きました。今の日本は、一年中いつでも欲しい食べ物が手に入りますが、食料自給率は40%で、60%は海外に依存しています。世界の片側で飢餓があり日本は飽食。人として生まれて誰でも平等に生きる権利があるのに、世界の食を奪ってよいのでしょうか?と思っています」。さらに、アジアに住む女性たちが教育を受けられるよう支援するNPOの活動について情報共有する中で、このようにも考えているそうです。「次の世代を担う子どもたちに伝えていくことが必要ではないでしょうか。簡単に使えるようなワークショッププログラムがあるといいですね。飢餓などの世界の現状を悲観的に伝えるのではなく、一緒に考えていくことが大切だと思います」。

生活クラブの活動を通して、長年にわたり食について考え、伝え続けてきた五十嵐さん。今まで行ってきた活動を、次の世代にもつなげていきたいと話してくれました。

学生団体
ユース・エンディング・ハンガー事務局・東京

世界から飢餓を終わらせるために活動する国際協力NGOハンガー・フリー・ワールドの青少年組織ユース・エンディング・ハンガー。昨年の世界食料デーに、ハロウィンをイメージしたサルベージ・パーティ「Halloween Party-余った食材が大変身!もったいないを美味しいに-」を開催した事務局の井上彩花さん、大葉美佳さん、東京グループの波多葵さんにお話を伺いました。

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今回のハロウィンイベントはどのような発想から生まれましたか? どのように形にしていったのですか?

井上:ハンガー・フリー・ワールドの職員さんとご飯を食べながら話していたときに、「世界食料デーとハロウィンを掛け合わせて何かやらないの?」と聞かれ、「楽しそう!」と思いました。ちょうど、アジアやアフリカで活動するメンバーとも連携して「何かしたい」と思っていたので、国際的な記念日の世界食料デーだったらいい機会になるかなと思いました。ただ、活動全体を統括する事務局にいたこともあり、今までイベントを企画したことがなくて……。イベントをよく開催している東京グループに話を持ちかけました。

波多:東京グループのメンバーに相談してみたところ、楽しみながら参加してもらえるイベントということで話し合いも盛り上がって。「ハロウィンだったら、参加者に仮装して来てもらったらおもしろいんじゃない?」とか、いろいろなアイデアが出てきました。

大葉:私はユース・エンディング・ハンガーの活動に参加したばかりだったので、正直なところ何が何だかよくわからないまま準備に関わり始めました。イベントのニュースリリースを新聞社やテレビ局に配信したのですが、初めてだったのでとても緊張して。電話をしても「忙しいから……」と冷たくあしらわれることがほとんどでしたが、最終的にはイベントの告知を新聞に掲載してもらうことができて、とてもうれしかったです。

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イベントはキャンセル待ちが出るほど大盛況でした。 実際に開催してみてどうでしたか?

波多:イベントの内容がわかりやすくて楽しそうだったのと、国際協力イベントではあまりないような新しい企画だったので、たくさんの人に参加してもらえたのだと思います。

井上:普段のイベントよりもFacebook経由で参加してくれる人が多かったです。タイトルや内容を少し見ただけで「楽しそう!」と思ってくれたのかもしれません。勉強会のような真面目なイベントとは違って友達を誘いやすかったので、知り合いの大学生もたくさん来てくれました。

大葉:当日、楽しそうに参加してくれている人たちを見て、やってよかったと思いました。特に、料理が出てきたときの反応や、発表を一生懸命聞いてくれる表情を見て、うれしかったです。

井上:今回のイベントは、飢餓や食料問題にまったく興味がない人たちに、何か行動を起こしてもらうきっかけにしたいと思っていました。参加してくれた人に、まずは世界の現状について知ってもらえたことが大きかった。私たちが伝えたかったような、食料がたくさん捨てられている一方で食べられない人がたくさんいる、ということもきちんと伝わっていたので、目標は達成できたと思っています。

波多:普段のイベントでは、国際協力にある程度興味がある人に参加してもらって、さらに知識や考えを深めてもらうことがほとんどです。今回のイベントは、「楽しそう!」と、普段なら参加しないような人たちも来てくれました。そういった人たちが、何かしらの問題意識をもって帰ってくれたのもよかったです。

大葉:飢餓や食料問題は深刻でとても重たい話。みんなで楽しく食事をするような場所で話すのは難しいと思います。でも、例えばアルバイト先でたくさん廃棄が出ているとか、外食したときにたくさん食べ残してしまっているとか、日頃私たちが感じているような身近な問題から視野を広げてもらうことで、飢餓や食料問題についても考えてもらう方法があるなと、気づくことができました。

井上:今までイベントを企画したことはありませんでしたが、やってみると意外と形になるものだなと思いました。「こんなイベントをやりたい」と口に出してみたことで、「楽しそう!」と思った人たちがのってきてくれたり、協力してくれたり。

波多:失敗したら次に生かせばいいしね。

今年は日本各地で活動する他のグループや、アジア・アフリカで活動しているメンバーとも、同じテーマや目標を掲げて一緒に取り組めたらと話す3人。アイデアは全国や世界に向けて広がっているようです。